塚本香央里(つかもとかおり)
 ~ヴァイオリニスト&ライフオーガナイザー~
 

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2026/07/03
184「それぞれの道・視察旅行⑧」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

この3年間は娘たちも私も無我夢中で過ごしてきたような気がします。とにかく流されないで歯を食いしばりながら、無理に笑顔を作って必死に生きてきました。何があっても平気な顔をして、心で号泣しながら泥道をかき分けていくような。娘たちには涙を流すことを忘れさせてしまったような気もします。その先になにがあるのか全くわからず、生きていることだけを考え続けた日々。果たしてそれが良かったのかどうか、わかりません。その先に現れた今が本当に良いのかどうかもわかりません。

ただ、この旅の意味は、とにかくここまで辿り着いた次女の頑張りを大いに認めることでした。次女自身はもちろんのこと、それを見守った長女も私も、自分の事のように褒めたたえることが必要でした。

そして、画面越しで話を聞いていても、その場にいなければわからなかった見えない部分の感情や、伝わらなかった、伝えることのできなかった細かいディテール部分の話を、いまだから話せることとして、改めて時系列で聞き取りをすることが、今の私の役目かもしれません。

娘たちの生活する町を歩きながら、ひとつひとつ壁にぶつかりながら歩き続けた3年間の積み重ねを改めて思い返しました。自分の留学時代とは全く違う、今の時代の生き方や生活様式。この先の将来への道の進め方にも、それぞれの深い視点のビジョンがあることを心に刻みました。

1年後・・・どうなっているのか楽しみです。

2026/06/25
177「ポーギーとベス リサイタル2026」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

音の旅人ヴァイオリンリサイタル2026。プログラム小出し編。

最後はガーシュイン作曲『ポーギーとベス』。

この曲を選んだ理由はロリン・マゼールのCDの印象が強く影響しています。大好きなCDの一つです。なぜか今回はこの曲を入れたかったです。

マゼールは指揮者でしたがヴァイオリンもかなりの腕前でした。留学時代に参加したオーケストラアカデミーで、マゼールが指揮をする演奏会がありました。コンミスだったため、緊張して演奏会前に楽屋へあいさつに行くと、ヴァイオリンの練習中でした。楽しそうに練習しながら私に笑いかけて「このパッセージが難しい」と言いながら「本番は楽しんで弾くように」と言われました。必死に弾きましたが、楽しい演奏会でした。若者ばかりのオケだったので内情は精神的に疲弊することも多く、コミュニケーションを含めて難しく感じることもありましたが、終わってみれば良い経験でした。なにより、マゼールとの音楽を通しての楽しみがありました。こんなにも、指揮者によって音楽に広がりが出るのか!という驚きと共に、音楽の深さを実感したからです。まさに「本物にふれる」経験でした。

この演奏旅行後にマゼールはCDを出しました。その中の一番最初に収められていたのが『ポーギーとベス』でした。マゼールの美しい柔らかで上品な音色は、いま聴いてもうっとりします。

『ポーギーとベス』は5曲からなる組曲。オペラの中のアリアを抜粋して、ピアノとヴァイオリンにハイフェッツが編曲しました。そう、ハイフェッツなのでヴァイオリンはかなり難解です・・・ジャズの要素が強いけれど即興要素はなく、しっかりと弾きこまなければ音楽が逸脱していきます。若くして逝ってしまった才能豊かなガーシュインの曲は、オーケストラで何度も演奏したことがあります。陽気でちょっとアイロニックな音楽は、私の憧れです。

さて、私の奮闘ぶりを楽しみにしていただければと思います。



2026/06/24
175「グリーグのヴァイオリンソナタ第2番・リサイタル2026」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

今年のリサイタルでは、グリーグのヴァイオリンソナタ第2番をお披露目します。

第1番の若々しい猪突猛進なところも大好きなので候補には上がっていたのですが、第2番の2楽章に魅せられました。

譜読みから始めて全体の雰囲気をつかみ、細部の練習に移っていきますが、美しいメロディーラインに心が揺さぶられます。グリーグの曲は、ピアノコンチェルトが有名で、一度聞くと忘れられないような・・・インパクトが大きい気がします。ピアノがもっと弾けたらいいのに・・と残念に思うくらい中学生時代はよく聞きました。高校生になって弦楽合奏版の『ホルベアの時代』を弾いて「わぁ、楽しい」と感じたくらいで、ヴァイオリンソナタはあまり知らなかったです・・・

この10年くらいでグリーグのソナタが再燃してきて、たくさんのヴァイオリニストのコンサートで演奏されるようになってきたように感じます。第3番が人気とのことですが、グリーグの成熟した重量感のある音楽が最大限に活かされているからでしょう。ただ、2番の若々しい中にも陰影を意識した音作り。ヴァイオリンという楽器に表現させることの実験的な取り組みを感じることができます。


初めてお客様の前で演奏するのは緊張しますが、これからじっくりと熟成させながらグリーグの曲に込めた思いなどが伝わるようにしたいと思っています。お楽しみに!

 


2026/06/23
174「雨の歌によせて・リサイタル2026」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

今年のリサイタルは私の心の支えになっているブラームス作曲「雨の歌」を軸に考えています。
高校生の時に、周りの同級生たちに圧倒されて自分を見失ってしまったとき。ふと耳にしたこの曲の美しさに魅かれ、繰り返し聴いていました。心の中に染み込むような音。当時はレコードでした。何もしないでぼんやりと、その音を聞きながら小学生時代に住んでいたドイツに思いを馳せ、よし、大学卒業したら留学しようと心を新たにした大切な曲でもあります。人は人、自分は自分という考えが定着のもこの頃かもしれません。
この曲を弾く時は、いつも高校時代の苦しかった自分を思い出します。楽しかったけれど闇雲に頑張った時期でもあります。結果が出る時もあれば、全然見向きもされなかったこともある。自分を粘土のようにこねくり回して、たたきつけ、成形しながらまた壊す。その繰り返しでした。その後も、人生での一区切りがあると必ず演奏したくなります。出来上がったものを、少し壊す。微調整では効かなくなったものを、改めて見直す。
50代の今、シンプルな気持ちで向き合いたいと思っています。決して平たんな道ではなかった自分の人生を振り返り、先に続く道がどうなっていくのかを立ち止まってのぞき込むような・・・そんな気持ちが音に現れればよいなと思っています。
節目に弾いてきた曲だからこそ、その変化が感じられると思います。
自分の立ち位置を改めて確認するような、私の姿を聴いていただければと思います。

2026/06/22
173「音の旅人ヴァイオリンリサイタル2026」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

夏至を過ぎると気分的には夏へまっしぐら、といった気持ちになります。今年の夏も暑いのでしょうか。近年の夏の厳しさに恐れながら、今年もしっかりと身体を大切にしながら過ごしていきたいです。

私の場合は7月から12月まではマラソン選手のようにペース配分をしながら進んでいきます。これから12月のリサイタルに向けて本格始動をしなければなりません。プログラムについては、長いベートーヴェンプロジェクトを終えたので次のステージへと進みます。まずは「原点回帰」といった視点から、自分の音楽家としてのルーツを思い起こしながら構成しています。


「音楽家」ということを意識したのは小学校6年生頃だったでしょうか。「音高受験」という言葉を、師事していたヴァイオリンの先生から聞かされた時に、親子でスッと背筋が伸びました。音楽高校という未知の世界。先生から受験する権利があるよ、ということを聞くだけでも緊張しました。当時は支持する先生のGOサインがないと、音楽高校受験は難しかったからです。私は音楽の道に進むということがどんなことなのかまだ全然わかっていなかったので、本当に新鮮な気持ちでその言葉をかみしめました。ボンヤリしてふわふわした幼い思い出です。

その後無事に桐朋に合格してから、徐々に「音楽家」を意識していましたが、何しろ周りの友達が凄すぎて・・・落ち込むことも多々ありました。まぁ、自信を無くしましたね。それでも、友人は楽しくて素敵な人ばっかりだったので劣等感に悩むこともなく、浮き沈みの激しい学生時代を過ごしました。その頃になると、音楽家以外の人生は思い浮かべることができなくなって、とにかく楽器を一生弾いていくんだな・・・という覚悟が決まった感じです。


「ヴァイオリンを弾くことをあきらめない」というのが私の目標となり、道を照らすランプのような存在となりました。

弾けない時があってもいい。弾きたくない時があってもいい。それでも自ら手放すことのない存在。それが私にとってヴァイオリンです。

そんな思いを込めた原点回帰の「音の旅人ヴァイオリンリサイタル2026」。

楽しみにしていただけたらと思います。