塚本香央里 ~ヴァイオリニスト&ライフオーガナイザー~
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2025/09/05
248「弦が切れたら・・・②」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

昨日は弦が切れた時のお話をしました。
その後、気になる他の弦も替えました・・・
汗だくになりながら・・・

本番が近づいてくると
耳が敏感になるようで
自分の弾いている音に妙なこだわりがでてきます。
「もっときれいな深い音は鳴らないものだろうか」
「なんでこんなところで雑音がするんだろうか」
「A船とD線のバランスが悪いのはどうしたものか」

あれこれ考えて
最終的には
「弦を変えた方が手っ取り早い・・・」となることが多いです。

私の場合は
少なくとも本番1週間前までには替えるようにしています。
なにせ、不器用なものですから・・・
私が弦を替えることで
何か不具合ができて、
自力でどうにもならなったときに
1週間あれば、楽器職人の元へ駆け込むことができます。

過酷な夏の暑さ、湿気、汗という環境に耐えて
本番を控えた私のメンタルを支えてくれる楽器。
17歳から共にしているおばあちゃん楽器ですから
繊細な部分もありますが
どちらかといえば順応性が高くて
頼りになる存在です。

「ま~た、そんな無茶して~勘弁してよ!」と
文句を言われているような気がするときは
「ごめん、ごめん、でも何とかよろしく~」

「え~ん、どうしよう~」と泣きそうになる時は
「まぁまぁ、なんとかなるからまかしとき!」と
安心させてくれます。

弦を替えるときも
「気ぃつけなさいよ~。ほらほら、しゃんとしなさいよ~」と
言われているような気がしました。

楽器との協働。
本番に向けて、更に会話を増やしていきたいものです。





2025/09/04
247「弦が切れたら・・・」  

(別の場所にアップしていたので変更しました)


こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。


昨日、ひさしぶりにE線がバチコーンと切れました・・・

暑さと湿気と汗で

かなり過酷な夏の時期だったので

いつ弦が切れてもおかしくない状態でした。


ちょうど練習が終わるタイミングだったので良かったです。


切れた瞬間は、さすがに「おおっ」となるのですが

どの部分から切れたのか確認します。

根元か?

真ん中か?

先か?

(E線は根元からの場合が多い)


次に楽器に傷がついていないか確認します。

今まで傷がついたことはないのですが

一応確認。

(切れた弦を持ちながら楽器を持ったりすると

自分で傷つけることがあるので要注意です)


後は粛々と弦を取り換えます。

スペアの弦は、それぞれ2本ずつくらい持っているので

取り換えたら補充するようにしています。

(今回はスペアが1本しかなかったので

焦って今日、買ってきました)


楽器は4本の弦を張った状態が本来のテンション(張力)なので

速やかに弦を張り変えなければなりません。


私はこの弦を変える作業が苦手です。

小学校高学年からずっと自分で張り替えているのですが

なかなか思うように弦を張ることができません。

不器用なんだと思います・・・

糸巻の向きによって、調弦が容易だったり、難しかったりするのですが

いつも1回でできたためしがありません・・・


四苦八苦してやり直していると

今度は駒の角度が変わってきてしまいます。

楽器と駒は90度。


やっと張り替えて

新しい弦を弾いてみると

新品の音がします。

キラキラして

ちょっと生々しい音。


そこで慣れるために

音階を弾いたり、練習曲を弾いたり

全部の弦を弾いてみたり

バランスを整えていきます。


ここまでの作業で20分くらい。

私の場合は緊張するので汗だくです。


深呼吸をして終了。


しばらくしたら

もう一度楽器ケースを開けて

弦の様子を見ます。


この作業をオーケストラの演奏中に

舞台上でやってのけた古参のメンバーがいました。

コンチェルトを演奏していたソリストのE線が切れた時に

「この弦に張り替えて3楽章までに返して」と言われて

楽器と弦を持たされたことがあります。

通常、弦が切れた時は舞台袖に戻って

弦を張り変えたり

別の楽器を持ってきて演奏を続行することになっています。

この時は、舞台袖まで戻らず

舞台上で今すぐ変えてくれ!ということでした。

ただでさえ苦手な弦の張替えに「私はできないからお願い!」と

後ろの古参のメンバーに渡しました。

黙って弦と楽器を受け取り

2楽章という静かな楽章の中を音もなく作業し

時間ぴったりに楽器がソリストの手に戻り

完璧な調弦で演奏が終わったとき

私たちオーケストラのメンバーは

古参のメンバーにブラボーを言ったという

懐かしい思い出があります。


しみじみ・・・





そういえば・・・

今回弦が切れた時

根元のループ部分が飛んでいったはずなんだけど

見つかっていないから

部屋のどこかに転がっているかもしれないが

踏みつけたら痛いだろうなぁ・・・

2025/09/03
246「ベートーヴェンとともに歩いていく毎日」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

12月のリサイタルを頭の隅に置きながら
今は目前の「Mube'88」のコンサートに向けて
そろそろエンジン全開で準備しています。

今回はジョイントコンサートなので
ご一緒する方の演奏も楽しみです。

テーマは「ベートーヴェン」
歌曲・ピアノソナタ・ヴァイオリンソナタと多彩な楽器群。
作曲年は1803年~1816年という黄金期。

一人の作曲家が
様々な楽器に対して
どのように魅力を表現し
何を求めたのか

そんなことを聞き比べられる
とても貴重な機会だと思います。

いつも新しい発見を求め
ベートーヴェンからのメッセージを
敏感に感知できるような演奏を目指して
コンサートにむかいたいと思います。

「クロイツェルソナタ」は大好きなソナタ。
今回も学びを経て
自分の中で咀嚼した音楽をお届けしたいです。
12月のリサイタルは10番のソナタなので
そのつながりも意識しながら
9番から10番までの時間経過とベートーヴェンの心の軌跡も
感じられたらと思います。


ピアニストの川元真里さんとは
様々なコンサートでご一緒しています。
地域の小さなコンサートや
学校コンサート
ロビーコンサート
絵本コンサートも試行錯誤しながら共演しています。

お互い
家族・介護・変化の年月を経ながら
演奏スタイルを模索中。
リハーサルの休憩中は
お互いの生活についてや練習の事、
健康、食事、
家族のことなどを話しています。

私たちの
演奏だけではない
生身の音楽家を感じていただけたらと思います。

会場でお会いしましょう。



2025/09/02
245「12月まで」  

こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。


リサイタルのチケット発売開始になりました。

12月はまだ先・・・

と思っていても

時間は音もなく進んでいるので

早めに自分時間を確保しましょう!


今年のフライヤーも

ステキなデザインに仕上げていただきました。

この数年は、同じようなスタイルの写真ですが

とても気に入っているシリーズです。


2014年から始まったベートーヴェンのソナタシリーズ。

11年は思いのほか、大きくながい時間でした。

自分の状況がここまで大きく変化するとは思っていなかったですし

コロナ禍なんて誰も想像していなかったし・・・

10年という時間を安易に、簡単に考えていたなぁ‥とも思います。


でも、自分の中にある軸は変わることなく

ひたすらに歩んできたという

まさに【涓滴岩を穿つ】の心境そのものです。


飽きっぽくて

集中力が続かなくて

興味の対象がバラバラで一貫性がなく

気持ちの起伏が激しい・・・


ベートーヴェンのソナタ10番が

私に変化の兆しを与えてくれようとしています。


12月までの時間を大切にしながら

このブログでも

自分について

音楽について

ベートーヴェンについて

その他の楽曲について

綴っていこうと思っています。


そのうえで

当日会場でお目にかかれることを楽しみにしています。




2025/09/01
244「音楽家のための・・・」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

ルツェルンにいる長女から
「この本の著者がいるの!
今度レクチャーを受けることになったのよ。
残念ながら本は日本に置いてきちゃった。
電子書籍で買いなおしてレクチャー受けてくるわ」と連絡をうけて
どれどれ・・・どんな本なんだろう?
と長女の本棚から拝借して読み出したら止まらなくなって短時間で読了しました。
『クラシック音楽家のためのセルフマネジメントハンドブック』(ベルンハルト・ケレス+ベッティーナ・メーネ)

”音楽家が音楽家として生きる”
これは長女がずっと考えていることです。

音楽家の立場は正直に言えば、なかなか厳しくて難しい。
安定した職業ではないし
全てが自己管理。
演奏だけではなく、日常生活もこなさなくてはならないし
健康管理もしなければならないし、生きていれば噴出してくる
人間関係や役所関係、煩雑な事務手続きなどで忙殺されます。

そういった中で
10年後の自分は何をしているのか
自分の指針となる方向を見定めて
今日、今からできることを始める。

ライフオーガナイズと同じ手法を使って
行動を細分化していく方法が記されていました。
もちろん、音楽家を対象としているので
改めて自分のことを振り返って
質問に答えてみたりしました。

50代で人生の先を想像するのは
かなり勇気のいることです。
自分で思っているほど先は長くないし
つい数日前に想像していた未来のことが
唖然とするほど簡単に崩れ去ってしまう経験も現実にあるわけです。

私もつい最近まで
年単位での目標を考えることができませんでした。
目の前の事に集中して、こなすことで
安心感・満足感を得ていました。
自分がちゃんと生きること
息をして、食べて寝て、毎日を初めて終えること。
ただそれだけできれば合格でした。

でも、そろそろ次に行く準備は整ってきたようです。

私には捨てる「自分」がありません。
「思い出」も全部抱えながら、重い荷物を引きずって進むのは
容易ではありませんが
そこは50年以上生きてきた智恵があります。
荷物を分散して、持ち運ぶこと。
お手伝いしてくれる人を探す。
道具を使って運ぶ。
一時保管所に預けておくこと。

もしかしたら、いつか「手放す」ことができるものがあるかもしれません。
「捨てる」から始めない。
そう、持っていても動けるのであれば
持っていれば良いのです。

そんなことを思いながら
新しい9月という月を始めました。











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