こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。
14年前の今日。
まだまだ子育てに忙しい時期で
それでもヴァイオリンを弾くことを
必死に続けていた頃でした。
その頃は月一回、聖路加国際病院のトイスラーホールで開かれる
ボランティア演奏者によるお昼のコンサートに参加していました。
演奏する機会が多くなかったので
このコンサートに参加させてもらえることは
とても貴重な時間でした。
月一回のおでかけは、
長女は学校の放課後キッズで遊べるし
次女は延長保育でお友だちや先生と遊べるから
私も少し羽を伸ばしてお茶を飲んだり
買い物を楽しんだりしていました。
あの日も自分の出番を終えて、
少し早くコンサートを抜け出しました。
いつも、自分の時間を少しでも満喫するために
銀座に寄って、娘の洋服を買ったり
本を買ったりするのですが
その日はなんとなく「早く帰らなきゃ」と焦る気持ちがあり
いつもより早い時間に帰路につきました。
電車の中からふと空を見ると
不安になるような見たことのない雲の色で
心がざわざわしたことを鮮明に覚えています。
帰宅して手を洗い
洗面所のある2階から階段を降りるときに
ガタガタと
尋常ではない揺れがはじまり
あわててダイニングテーブルの下に入ったところで
夫からの連絡が携帯にかかってきました。
「今切ったらもう繋がらなくなるから」と言われ
テレビをつけてニュースを見ながら
お互いの状況を伝えあいました。
その後、私は娘たちのことが気になるので
「これから娘たちを迎えに行ってくる」と
電話を切ったとたんに幼稚園から連絡が入りました。
「あぁ、よかった。お迎えに来られますか?」
その後
バタバタと準備をしていると
近所のママさんが
「大丈夫?」と言いながら
外を走りながらご近所さんの安否確認をしていました。
私はとにかく娘たちを迎えに行かなければ、と
小学校と幼稚園へ向かい
無事に合流して自宅へ帰りました。
あの日からの混乱は
それまで経験したことのないものでいっぱいでした。
さまざまな情報が錯綜して
どんな風に状況を咀嚼すればよいかもわからない。
不安しか感じられない時間でした。
あれから14年。
あの時のことを
忘れないことが
私にできることです。
音楽家として私にできること。
静かに
祈りとともに
音を紡いでいきたいと思っています。