塚本香央里 ~ヴァイオリニスト&ライフオーガナイザー~
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38「姉妹:私の場合」

2025/02/07
38「姉妹:私の場合」
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

私には姉がいます。

5歳半(6学年)違うので

幼い頃はまるっきり相手にしてもらえませんでした。

喧嘩なんて、一方的に私が挑んでいるだけで

姉はずっと知らん顔してました。


勉強家で真面目。

時々ポロリと面白いことを言うけれど

周りの人が気がつかないこともあったりして

近くにいる人だけが笑っている。

運動神経もそこそこあって

直線を走るのはものすごく速いのに

障害物競走になると途端に

あれ?どこ行きました???・・・


両親も姉への信頼は絶大で

期待も大きかったです。

「お姉ちゃんなんだから」

「しっかり勉強しなさい」

今の時代ではNG表現のことを

当然のように言われていたな、と。

私の分まで怒られていることもありました・・・

(次女あるあるの要領の良さで)


姉は語学の才能があり

ドイツ語・英語は問題なく話せて

フランス語も「なんとなくわかる」らしいです。


独立心の強い姉は、17歳の時にドイツの音楽大学に入り

独り暮らしをしながら

生徒を教える音楽教室の先生にもなり

学士過程、修士課程を終えて

コンサートピアニストという称号を得ました。

もちろん、途中で体調を崩したり、

家族にとっては意味不明なこともしていました。

若さあるあるでしょうか。


だから、私たち姉妹が一緒に暮らした時間は

11年に満たないくらいのもの。

「ひとりっこ」が2人いるような感じでした。


彼女の得意とするのはピアノ教育。

演奏家として舞台に出るというより教育者として

生徒さんを指導することに喜びを感じていました。

日本に帰国してからも、指導者としての仕事中心でしたが

50代半ばで病気から失明し、盲目となりピアノを辞めました。

自宅からピアノを運び出す日

私も一緒にピアノを見送りました。

彼女の音楽家人生の終わりでした。

それからのち

白杖歩行訓練や点字練習、安全に生活をするための

新しい生活様式を学び

長く長く、苦しい時間を経て、

彼女は今、点字教室の指導をしています。

「やっぱり教えることが好きなの。

生徒さんにいろんな可能性を伝えることに燃えるのよ!

アレコレおせっかいなのよ、私」と話す姉はいつも生き生きしています。

↓姉のポッドキャスト


https://podcasts.apple.com/jp/podcast/%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85%E3%82%86%E3%82%8A%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%AE%E6%97%A5%E3%80%85/id1551338944


私自身の子どものころは

ヴァイオリンを弾くより

身体を動かしているほうが得意で

お勉強はまぁまぁ・・・

体育の成績だけはずば抜けて良くて

音楽高校を受験するときは

最後の最後まで悩みました。

体育大学に行った方がいいかも、って。

ヴァイオリンの練習だって

当時、2時間程度が限度のお粗末さ。

両親もため息をつきながら

「あなたは本当に体育が好きよね」と

半ば呆れるように

「ヴァイオリンはどうするの?」と言いつつ

目の奥は「仕方ないわね~」といった諦めが

透かして見えるような物言いでした。

それでも

体育の道を選択することはなく

ヴァイオリンを相棒にすることに決めて

弾き続けることにしたのです。

多分「これが私の道かな」と直感がささやいたから。

音楽の道に進んでからは

同学年の友人に刺激を受けて

勉強し

練習を重ねて

七転八倒しながら

頭をひねり

まだまだ

今もなお弾き続けています。

「やっぱりヴァイオリンを弾いているときが自分らしいかな」と思うから。

でも、いつ何かが起こってヴァイオリンが弾けなくなるかもしれません。

私は姉のように多才ではないので、そんなことになったら不安しかないですが・・・

そんなことになったらどうしよう・・・

(考えをやめよう)


姉との6学年差の大きさは

時に意地の張り合いになり

競争相手になり

価値観の違いをぶつけ合い

お互いに傷つくことが多かったものが

今では「同じ年代」となって

穏やかな関係になりました。

姉が私の存在を

「小さな何もできない妹」から

少しだけ認めてくれたからかもしれません。


個性が違い

目指すゴールが違い

生活スタイルも全く違う

私たち姉妹。

それでも何か

そこはかとなく

共通点があります。

それは根底に流れる家族の基盤なのか

同じ音楽家という道を経験しているからなのか・・・


月に1回程度

定期的に会う姉妹の会。

相変わらず私は「妹」という立場に甘えて

ヘラヘラしているけれど

それでも姉の盲目になった目の代わりに

外側から彼女の心の奥を覗いているつもりです。