こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。
今月は札幌北一条教会での昼休みコンサートに出演します。
今回はヴァイオリン無伴奏曲が中心のプログラムですが、
バッハの『憐れみたまえ、わが主よ』はオルガンと演奏します。
この曲はバッハの有名な【マタイ受難曲】のなかの1曲です。
【受難曲】とは、イエス・キリストが、
自分が十字架にかけられるであろうことを予言するところから、
捕縛、裁判、十字架への磔、死、墓の封印までの物語を、
聖書に基づいて福音史家(この場合はマタイ)の語り、
登場人物の役を歌手が、
群衆役を合唱が受け持ち、
背景やその場の効果音をオーケストラが担当するという壮大な音楽劇です。
イエス・キリストの最後の1週間の出来事を3時間で追体験するというもの。
イエス・キリストが次々と、
弟子たちの裏切りや弟子としてのあるまじき行いを予言し、
うろたえる彼らを深い慈しみの目で見つめている。
その中の一つの出来事がこの「憐れみたまえ、わが主よ」。
逮捕されたイエス・キリストのことを、
一番弟子であるペトロが三度もイエスを知らないと言う。
言った直後に鶏が鳴き
「あなたは鶏が鳴く前に私を三度知らないというだろう」という予言に対して
「そんなことはない」と言い切った自分の行いに気づいて深い後悔と悲しみに打ちひしがれる場面。
原曲ではアルト歌手のアリアとして歌われます。
オーケストラの悲しみに満ちた音色がペテロを包む後悔の念を表現し、
ヴァイオリンソロが歌に寄り添うように、相槌を打ちながら慰めている様子が表現されます。
この曲のヴァイオリンソロパートは、
コンサートマスターのオーディションで審査されることも多く、
私もよく勉強しました。
歌手の息遣いに合わせて演奏することや、
その場面のイメージをより明確に伝える役割は難しいですね。
今回はオルガンがアルト歌手のパートを演奏するので、音作りも楽しみです。
教会でのコンサートは、コンサートホールとは違った魅力満載です。
今回のように聖書に基づいた曲がある場合は、
事前の予備知識がほんのちょっとでもあると、
より楽しく聞けるのではないかと思います。
今年の復活日は4月20日。その前の1週間が受難週です。
【マタイ受難曲】より「憐れみたまえ、わが神よ」日本語歌詞
憐れみたまえ、わが主よ
私の涙のゆえに
心も目も
あなたの前で激しく泣いています