こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。
中断しながらも、ようやく読了しました。
『暇と退屈の倫理学』(國分功一郎・新潮文庫)
通常、本を読んだ後は
ちゃんと完結した気持ちになるのですが
この本は「正解がない」ものなので
自分で「他の人はどんなことを思うのだろうか?」という
とてもつもなく不安(もしくは興味)を掻き立てるものとなりました。
著者本人も「これは自分の考えです、というものを書きたかった」とおっしゃっているので
私はまんまとその意図の罠にはまったことになるのでしょうが・・・
単純に面白かったです。
音楽家もそうかもしれません。
「この曲を、私はこんな思いで演奏しました」
と思っていても
全然通じていないこともあります。
むしろ、言葉で表現しなければ
音だけで伝えることはできないと思っています。
音楽の素地があったとしても
演奏者の内面までを理解することは難しいです。
私の演奏を聞いた人が
「あの部分が気になるなぁ」とひっかかりをもって
自分の生活に戻っていき
時折、
私のコンサートを思い出すことがあるならば・・・
私はその人の人生の時間に関わる瞬間があるという
幸運を受け取ったということになるのでしょう。
素晴らしい・・・
「楽しかった」
「素敵だった」
素直な感想を素直に受け取ることができて
さらにその先の音楽の深淵にまで
行きつくことのできる聴衆が生まれるとしたら。
私はそんな音楽家になりたいものだ。