こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。
ウジューヌ・イザイ(1858年-1931年)という作曲家はご存じですか?
ベルギーのヴァイオリニスト・作曲家。
1937年からイザイを記念した「イザイ国際コンクール」が開催されのち「エリザベート王妃国際音楽コンクール」となる。
ヴァイオリンを学ぶものならば、高校生くらいになるとイザイの無伴奏を勉強します。
バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ・パルティータの6曲に影響を受けてイザイも6曲の無伴奏ソナタを作曲しています。
それぞれの曲は、当時のヴァイオリンの名手であった6人の演奏家にささげられています。
各曲の作風は、演奏家のことを思って作曲されたので個性的。
演奏家同士でどの曲が好きか、弾きにくいか、談義するのは楽しいです。
私の師匠は3番が得意でとてもナチュラルに演奏されます。
その自然な流れとエスプリを理解するのが難しくて、
当時高校生だった私はイザイが(ものすごく)苦手でした。
その後の留学時代、ドイツ人の師匠は
「イザイはヴァイオリニストだったから、我々が弾けないような曲を作っていない。指の形も考慮されているから、それを理解すれば難しいことはない」
と言って、音程の取り方を丁寧にレクチャーしてくれました。
ただ・・・私はそれほど手が大きくないことと、肉厚ではないので二弦を同時に抑える5度音程には苦労しました。
今回の昼休みコンサートで演奏するイザイの無伴奏曲は第5番1楽章。
マチュー・クリックボームに献呈されています。
彼はイザイの一番弟子でした。
このソナタは自然への賛美や詩的で即興的なイメージが強く、拍子の感覚が希薄です。
そのため、演奏する方は逸脱しすぎないように、きちんと音楽の行き先の手綱を握っていなければなりません。
この第1楽章の題名「オーロラ」とは仏語で夜明け(または曙)。
夜明け前の静けさから、自然が緩やかに目覚め、陽光がキラリと輝く瞬間、鳥たちがにぎやかにさえずり始めるころ
太陽が力強く登っていく様子を表しています。