塚本香央里 ~ヴァイオリニスト&ライフオーガナイザー~
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97「イザイという作曲家をご存じですか?」

2025/04/07
97「イザイという作曲家をご存じですか?」

こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。



ウジューヌ・イザイ(1858年-1931年)という作曲家はご存じですか?


ベルギーのヴァイオリニスト・作曲家。

1937年からイザイを記念した「イザイ国際コンクール」が開催されのち「エリザベート王妃国際音楽コンクール」となる。


ヴァイオリンを学ぶものならば、高校生くらいになるとイザイの無伴奏を勉強します。

バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ・パルティータの6曲に影響を受けてイザイも6曲の無伴奏ソナタを作曲しています。

巨匠バッハの作曲した無伴奏曲を当代の名演奏家シゲティが演奏したものを聞いて、
その日のうちに6曲のスケッチを仕上げたと言われるほどイザイには大きな刺激となったのでしょう。

それぞれの曲は、当時のヴァイオリンの名手であった6人の演奏家にささげられています。


各曲の作風は、演奏家のことを思って作曲されたので個性的。

演奏家同士でどの曲が好きか、弾きにくいか、談義するのは楽しいです。

私の師匠は3番が得意でとてもナチュラルに演奏されます。

フランスで長く研鑽を重ね、ちょっと日本人離れした感覚を持つ師匠。

その自然な流れとエスプリを理解するのが難しくて、

当時高校生だった私はイザイが(ものすごく)苦手でした。

技術的にも難儀なことが多く
「私はイザイは弾けない」と思っていました。

その後の留学時代、ドイツ人の師匠は

「イザイはヴァイオリニストだったから、我々が弾けないような曲を作っていない。指の形も考慮されているから、それを理解すれば難しいことはない」

と言って、音程の取り方を丁寧にレクチャーしてくれました。

ただ・・・私はそれほど手が大きくないことと、肉厚ではないので二弦を同時に抑える5度音程には苦労しました。

それでも、しっかりと音の組み立てを理解すると
以前のナチュラルな部分やエスプリの部分が
単なる感覚的なものではなく
きちんと作曲された音になかに含まれていることに気がつきました。

今回の昼休みコンサートで演奏するイザイの無伴奏曲は第5番1楽章。

マチュー・クリックボームに献呈されています。

彼はイザイの一番弟子でした。


このソナタは自然への賛美や詩的で即興的なイメージが強く、拍子の感覚が希薄です。

そのため、演奏する方は逸脱しすぎないように、きちんと音楽の行き先の手綱を握っていなければなりません。

この第1楽章の題名「オーロラ」とは仏語で夜明け(または曙)。

夜明け前の静けさから、自然が緩やかに目覚め、陽光がキラリと輝く瞬間、鳥たちがにぎやかにさえずり始めるころ

太陽が力強く登っていく様子を表しています。