次女はこの3年間を大学学士過程に在籍していました。日本で音楽高校を卒業して、半年ほど引き続き大学の単位等履修生として在籍してからスイスへ留学しました。
長女は同じく3年前に日本の音大を卒業して、ドイツの音楽大学院に入学しました。
大学在籍と大学院在籍での違い、スイスとドイツという国の違い、生活様式の違いはそれぞれ大きかったです。さらに姉妹の性格の違いも影響していたように思えます。
☆大学と大学院:大学生はほぼ毎日授業があります。講義や実技はもちろんのこと、副科ピアノ、副科ヴィオラ、室内楽やオーケストラもしっかりと単位認定に含まれます。講義は全てフランス語。3年修了時には論文を書いてそれについての口頭試問までありました。最後に卒業リサイタルを開催してすべての単位を認定されると卒業できます。卒業式はひとりひとり名前を呼ばれて同級生からの歓声と共にディレクターから卒業証書を手渡されるというもの。
ドイツの大学院は、それぞれの大学によって違いがあるのですが、長女の大学院は取得義務のある講義が多かったようです。ドイツ語もかなりのレベルを求められて試験を受けなければなりませんでした。長女は室内楽メンバーとして声を掛けられることも多く、様々な編成の室内楽を渡り歩いていました。コミュニケーション能力が高いので、オーケストラのコンミスを担当した時も、合唱を含む大編成のオーケストラをメンバーと協力しながら率いていたことも印象的でした。現代音楽に興味を持っていることで広がったコミュニティも大きな強みになったようです。プロオケのMDR(中央ドイツ放送交響楽団)で短期就労の経験もして、盛沢山すぎる3年間を過ごしています。二人とも国や学校の奨学金制度に申請をして、経済多岐な負担減もさることながら、奨学金生の利点を生かした活動をしていました。堅実で真摯な姿だと思います。海外留学は華やかでお金のかかることばかりが目立って、肝心の勉強内容がおろそかになる傾向が見受けられますが、実際の留学生活は地味で質素で、心身健やかに過ごすことの大切さを実感する時間の方が多いような気がします。
☆スイスとドイツ:スイスはEU加盟国ではないので少し独立した雰囲気があります。生活の中でもスイス独自の方法や規律があるようです。小さい国ながら、様々な言語(仏・独・伊・英)を使えるという強みや誇りを感じます。次女には「私の住む地域はフランス語が主流だから、挨拶は必ずフランス語でね。その後は英語で話してもいいから」と言われました。その土地を尊重する気持ちは大切ですね。気持ちが引き締まりました。一方ドイツは懐かしさの大きい国ではありますが、30年前の状況とは大きく違い、都市(州)が変われば雰囲気も違い興味深かったです。思わず5月に読んでいた「自由 アンゲラ・メルケル」を思い出してしまいました。
☆生活:スイスは物価が高いです。ヨーロッパの中でも特に物価高なのは生活水準も高いということになるのでしょうか。人々に余裕が見えるのはそのせいかもしれません。しかしその中で暮らす留学生は仕送りが中心とはいえ、本人の金銭感覚も問われることになります。物価の高い中で生活するには知恵が必要ですし、自分が何を優先するのかを見極める目と判断力が必要になってきます。コンビニなどは存在しないので、外食を減らしてお弁当を持参したり、自炊は必須。意外とかかる交通費なども、安価なルートを調べたりといったリサーチに余念がなかったです。ユーロ圏のドイツも大きな差はありませんが、やはり節約することの大切さは同じ。お互いの国の相場を姉妹で連絡を取りながら、生活用品の購入の相談をしていたようです。
「二人ともヨーロッパだったら安心ですね」と言われても、二人の都市は列車で7時間。決して近くはないので基本的にはそれぞれが自力で何とかしなければなりません。一人暮らし一年生の二人が、3年を経てしっかりと土台を固められたのは、実家暮らしで培った「感覚」だと思います。基本的なことは、実家の生活がすべてです。各自の軌道修正は必要だったでしょうが、私の思いから大きく逸れていないことに安堵しました。