こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。
海外での「家問題」はなかなかシビアです。
私自身はちょっと苦労しました。
音楽家は自宅で練習したいので、音問題は深刻。
音大に十分な練習室が整っているのであれば
あまり問題にならないのですが
私の通っていた学校はほぼ全部がレッスン室や講義室なので
純粋な練習室は皆無。
初めての家はピアニストのお宅を譲り受ける感じで入居。
裏庭に面していて、日中でも薄暗くこぢんまりしたアパルトマンでした。
きっと昔は小間使いの部屋だったのではないか?と思うような造りで
トイレは玄関を出た先にあり(もちろん自分だけのトイレだが、自宅の扉を閉めてしまったら戻れない)
シャワーブースは湯沸かし20分、温水の出る時間が10分。
キッチンと呼べる場所はなく、簡易式電熱コンロが2口。
洗面所とキッチンの洗い場は同じ。
暖房器具がないのでオイルヒーターを自分の後をコロコロ転がして談を取る。
冬は本当に寒かったです。
若いとそんなことは全然気にならなかったですが
あの部屋を経験したおかげで
部屋に関しての期待値は一気に下がりました。
あまり、こだわりがなくなって
センスを磨くという努力をしなくなりました。
色々あって引っ越しをした次の家も
やはりヴァイオリニストから譲り受けた部屋でした。
明るくて小さなバルコニーもあり
大きいバスルームと洗面所もきちんとある
生活に十分な家でした。
ただその一帯は、低所得者用アパート群だったので
あまり治安が良くなくて
「え?あの一体に住んでいるの?」と驚かれたことも。
それでも、自分の仕送り金額や生活費を考えれば順当だと思いました。
今思えば、もう少し快適に過ごすことができたかもしれない、と
思うこともあるのですが
なにしろ生活することに手一杯でした。
今、娘たちが海外生活で
部屋に関してしっかりと
自分の居心地を重視して
基盤を整えていることに
驚きと羨望のまなざして見ています。
外で何かあっても
自分の家が安心で守ってくれると信じることができれば
自分自身を失わずに過ごすことができます。
どんなに短期間であろうとも
いつ退去を迫られても
不安定のまま過ごさない彼女たちの姿を
見習わなければいけないなぁ、と思いました。
海外で暮らすということは
全て自分の責任で過ごすということ。
その自分を、自分自身が癒してあげることの大切さを
彼女たちは身に着けているのだなぁ、と思いました。